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旧耐震建物の取得時における耐震診断とPML評価の考え方

―不動産デューデリジェンスにおける地震リスクの整理と考え方―

旧耐震建物の取得時における耐震診断とPML評価の考え方

不動産取得時に行われる建物調査(デューデリジェンス)とは

不動産の取得にあたっては、対象物件のリスクを把握するために各種調査が実施されます。これらは一般にデューデリジェンス(DD)と呼ばれ、法務・財務・建物など多角的な観点から確認が行われます。

その中でも建物に関する調査では、経年劣化や維持管理状況に加え、大地震時のリスクに関する確認が重要な項目となります。具体的には、建物の構造的な安全性を確認する耐震診断や、必要に応じた耐震改修の検討、さらに地震時に想定される損失リスクを把握するためのPML評価などが行われます。

特に旧耐震基準で建てられた建物においては、これらの内容を整理し、総合的に把握することが重要です。評価対象や目的が異なるため、それぞれの特性を理解した上で判断することが求められます。

耐震診断とは

耐震診断とは、大地震時における建物の倒壊から人命を守ることを目的として、建物が地震力に対してどの程度の構造耐力を有しているかを数値的に判定するものです。代表的な指標としてIs値(構造耐震指標)が用いられます。

一般的には、Is値が0.6以上であれば一定の耐震性能を有するとされ、0.6未満の場合は耐震性に課題があるとされます。また、0.3未満の場合は倒壊の危険性が高いとされ、早期の対策が検討されます。

耐震診断により、建物が大地震時にどの程度の耐震性能を有しているか、すなわち構造的な安全性を把握することができますが、一方で、地震時にどの程度の復旧費用が発生するかや、設備・内装の被害の程度、立地や地震動の違いによる影響といった内容については、耐震診断単独では直接的には評価されません。

必要に応じて、耐震診断の結果に基づき、耐震補強計画の検討が行われます。また、一定の基準を満たしている場合には、適合証明書の取得を行うことも可能です。

PML評価とは何か

PML(Probable Maximum Loss)は、大地震時における予想最大損失率を示す指標です。

具体的には、物件の想定使用期間(一般的に50年)のうち、10%の確率で発生する可能性のある大地震(再現期間約475年に相当する規模の地震)により、どの程度の被害を受けるかを、想定される復旧費用を建物の再調達価格に対する割合(%)で表したものです。  

たとえば、PMLが20%と評価された場合、想定される地震により、再建費用の約20%程度の損失が発生する可能性がある、という見方になります。

PML評価の考え方

PML評価は、主に大地震時の被害を想定し、以下の要素を組み合わせて算定されます。

まず、対象地域においてどの程度の地震が発生する可能性があるかを評価する地震ハザードを設定します。これは、活断層や震源距離、地盤条件などを踏まえ、発生し得る地震とその確率を考慮して整理されるものです。

次に、その地震が発生した場合に建物がどの程度損傷するかを評価します。これは一般に建物の脆弱性評価と呼ばれ、構造形式、築年数、耐震性能、劣化状況などに加え、保有水平耐力や変形性能等を踏まえて、想定される損傷度を評価します。

さらに、構造体だけでなく、設備機器や天井、配管といった非構造部材についても、地震時に損傷する可能性があり、復旧費用に影響する要素として考慮されます。

これらを組み合わせることで、地震時に想定される損失額が算出され、それを再調達価格に対する割合として整理することで、最終的な損失率(PML)が求められます。

耐震診断とPML評価の関係

耐震診断は建物の構造安全性を確認するものであり、PML評価は大地震時の損失リスクを把握するための指標です。

例えば、旧耐震基準の建物に対して耐震補強工事を実施し、耐震性能を向上させた場合でも、建物の損傷抑制効果によりPMLは改善する傾向にありますが、地盤条件や立地条件の影響が大きい場合には、必ずしも大幅な低減とならないケースも見られます。

これは、PML評価が建物の構造体(保有耐力)のみならず、設備機器や内装の被害による損失、さらには地盤条件の影響なども含めて評価されるためです。

このように、構造体の性能向上のみではPMLが大きく低減しない場合もあるため、両者は評価対象や目的が異なる指標として捉える必要があります。建物の地震リスクを把握するにあたっては、それぞれの特性を踏まえて総合的に判断することが重要です。

まとめ

旧耐震建物の取得にあたっては、構造安全性を確認する耐震診断と、地震時の損失リスクを把握するPML評価について、不動産デューデリジェンス等において確認されることがあります。

それぞれ評価の対象や考え方が異なるため、建物の構造性能だけでなく、立地条件や想定される地震動、設備被害の影響なども踏まえ、耐震性能と損失リスクの両面から判断することが求められます。

(監修・執筆)

本記事は、一般財団法人 日本耐震診断協会の知見をもとに作成しています。

藤田 健太郎(一級建築士/宅地建物取引士/一般財団法人 日本耐震診断協会)


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