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既存建物を残したまま土地活用はできるのか①

~分筆と同一敷地利用の考え方~

なぜ今、既存建物を活かした土地活用が注目されているのか

建物の建替えや土地活用を検討する際、多くの場合は既存建物を解体し、更地にした上で新しい建物を建築することが前提となります。

しかし実際には、全ての建物が容易に解体できるわけではありません。
テナントビルであれば入居テナントとの契約があり、賃貸マンションであれば入居者への対応が必要となります。また、工場や事業所では事業継続の観点から建替えが難しい場合もあります。

このような背景から、既存建物を残したまま土地を有効活用できないか検討するケースが増えています。

土地活用には二つの考え方がある

例えば、既存建物が建つ敷地内に、駐車場や空地など新たな建築計画が可能なスペースが残されている場合を考えてみましょう。

一般的には既存建物を解体し、敷地全体を利用して建替えを行うことになります。しかし解体が難しい場合には、

・敷地を分筆して別々に利用する方法

・敷地を一体として活用する方法

という二つの選択肢が考えられます。
どちらが有利かは建物の状況や将来計画によって異なります。

分筆という選択肢

分筆を行った場合、既存建物と新築建物はそれぞれ独立した建築計画となります。
既存建物と新築建物を切り離して考えることができるため、将来的な売却や資産整理がしやすいというメリットがあります。

また、新築建物は独立した敷地で計画することになるため、既存建物に関する確認事項を切り離して計画を進めやすくなります。一方で、建蔽率や容積率はそれぞれの敷地ごとに計算することになります。

例えば既存建物側に容積率の余裕が残っていたとしても、新築建物側で利用することはできません。また、分筆後はそれぞれの敷地が建築基準法上の条件を満たす必要があります。

特に注意したいのは既存建物側です。

建物を建築した当時は一体敷地として適法であったとしても、分筆によって既存建物に割り当てられる敷地面積が小さくなることで、建蔽率や容積率の制限に抵触する可能性があります。

そのため、分筆を検討する際には、新築建物だけでなく既存建物側への影響も十分に確認することが重要です。

同一敷地として活用する考え方

一方、敷地を一体として扱う場合は考え方が異なります。
建築計画は既存建物と新築建物を含めた敷地全体で検討することになります。

特に既存建物が容積率を使い切っていない場合には、その未利用部分を活用できる可能性があります。

建物所有者にとっては、

・既存建物を解体せずに済む

・立退きや営業補償を回避できる

・解体費用を抑えられる

・土地利用効率を高められる

といったメリットが期待できます。

一方で、既存建物に未利用の容積率が残っているからといって、その全てを新築建物で活用できるとは限りません。
実際の計画では、道路斜線制限や隣地斜線制限、日影規制など様々な法的条件を満たす必要があります。
そのため、理論上は容積率が余っていても、建物計画によっては十分に消化できないこともあります。

既存建物を残したまま敷地を一体的に活用する場合には、既存建物の状況によって計画の進め方が異なります。

同一敷地として計画する場合には、新築建物だけでなく既存建物も含めて建築計画を検討することになります。
そのため、建築時期や検査済証の有無、図面の保存状況など、既存建物の状況を把握することが重要です。
建物によっては法適合調査や耐震性能の確認が必要となる場合もあり、必要な調査内容は一律ではありません。

同一敷地として活用するかどうかを判断する際には、土地利用の可能性だけでなく、既存建物の状況もあわせて検討する必要があります。

土地利用の自由度と将来計画

同一敷地として計画する場合、現在の建築計画だけでなく将来の資産活用も考慮することが重要です。

既存建物側に残っていた未利用容積率を活用して新築建物を計画した場合、その容積率は新築建物によって消費されることになります。
そのため、将来既存建物を解体して建替えを行う際には、既存建物側に残されていた未利用容積率を利用できなくなり、建替え可能な建物規模に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、将来的な売却や資産整理を目的として土地を分筆する場合には、同一敷地を前提とした建築計画が制約となることもあります。新築建物が既存建物側の未利用容積率を活用している場合には、分筆によって新築建物が容積率超過となる可能性があるためです。

このように、同一敷地としての活用は土地利用効率を高める一方で、将来の建替えや資産活用の自由度に影響を及ぼす場合があります。

そのため、同一敷地として活用するか、分筆するかは、現在の建築計画だけでなく将来の資産活用まで含めて判断することが重要です。

ケーススタディ

ある建物所有者様から、隣接地を活用した新築計画についてご相談をいただきました。

既存建物は旧耐震基準の時代に建築されたテナントビルで、全てのフロアにテナントが入居していました。建替えによる土地活用も検討されていましたが、テナントの退去や営業補償を考えると解体は現実的ではありませんでした。

一方で、既存建物は容積率を使い切っておらず、敷地全体として見ると未利用の容積率が残されていました。そのため、分筆して別々に計画する方法だけでなく、既存建物を残したまま敷地を一体的に活用する方法も検討することになりました。

同一敷地として未利用の容積率を活用するためには、既存建物がどのような状態にあるのかを確認する必要があります。
本件は、旧耐震基準で建築された建物であり、検査済証も確認できなかったことから、法適合調査および耐震診断が重要な検討事項となりました。

現在は、既存資料の整理や現況調査、図面復元、耐震診断等を進めるとともに、建築基準法や消防法への適合状況について、特定行政庁や指定確認検査機関等と協議を行いながら検討を進めています。

既存建物の状況によっては是正工事や耐震補強工事が必要となる可能性もありますが、既存建物を活用しながら、未利用容積率を活用した新築計画の実現を目指して進行中です。

まとめ

建物所有者の中には、「土地活用をしたいが、既存建物を解体することは難しい」という課題を抱えている方も少なくありません。
そのような場合、分筆による活用だけでなく、既存建物を残したまま同一敷地として計画するという選択肢が考えられます。

ただし、同一敷地として活用する場合には、容積率だけでなく将来の建替えや資産活用への影響も考慮する必要があります。また、既存建物の状況によって計画の進め方が異なるため、建物の状態を把握することも重要です。

次回は、検査済証の有無や建築時期によって何が変わるのか、また法適合調査や耐震診断がどのような場面で活用されるのかについて解説します。

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(監修・執筆)
監修:一般財団法人 日本耐震診断協会
執筆:藤田 健太郎(一級建築士・宅地建物取引士)

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